ファクタリングの利用を検討するとき、最も参考になるのは「自分と同じ業種・同じ状況の事例」です。株式会社JPSが2025年11月に経営者・役員118人に行ったアンケートでは、ファクタリングで「失敗した」と感じた経験がある人は36.44%。そのうち約70%が「手数料が想定よりも高かった」と回答しています。
つまり、事前に「自分の業種ではどのくらいの手数料で、いくら手元に残るのか」を具体的にイメージできていれば、失敗の大半は防げるということです。
八木 健介|中小企業の資金繰りサポーター
都市銀行の法人営業を経て広告メディア会社を創業。銀行員時代の融資審査経験と、卸売業で支払サイト90日の資金繰りに苦労した経営者としての実体験をもとに執筆しています。
本記事では、建設業・運送業・製造業・卸売業・人材派遣業・IT業・医療業・介護業・飲食業の9業種について成功事例10ケースと、業種を問わず起こりうる失敗パターン2ケースを、金額・手数料率・手取り額の具体数字付きで解説します。
各業種がファクタリングを利用する理由や利用率データについては「ファクタリングを利用する事業者一覧と利用理由」をご覧ください。
- 成功事例 ─ 業種別ケーススタディ10選
- 失敗から学ぶ ─ 避けるべき2つのパターン
- 2社間 vs 3社間 ─ 事例から見る使い分け
- 事例から導き出す「ファクタリング成功の3原則」
- 業種別の利用率データ・個人事業主向け情報
- まとめ
成功事例 ─ 業種別ケーススタディ10選
事例1. 建設業 ─ 工事請負代金の即日現金化
状況
関東地方の内装工事業者(従業員8名)。元請からの工事請負代金1,800万円のうち着手金600万円は受領済みだが、残金1,200万円の入金は完成検査後(約3か月後)。その間にも職人への日当・材料費が月200万円発生し、手元資金が不足していました。
対応
残金1,200万円の売掛債権のうち600万円分を2社間ファクタリングで即日資金化。手数料率10%で手数料60万円、手取り540万円を受領しました。
成果
工事を予定通り完工。元請からの評価も維持し、次の受注にもつながりました。
ポイント:建設業は売掛先(元請)が明確で契約書が整っているためファクタリング審査に通りやすい業種です。公共工事であれば発注書があるため、さらに有利になります。
事例2. 建設業 ─ 建設業許可の現金要件クリア
状況
一人親方から法人化した建設業者。建設業許可取得のための「500万円以上の現金預金」要件を満たすため、約300万円の資金が不足していました。
対応
保有する売掛債権350万円をファクタリングで即日資金化。手数料率9%で手数料31万5千円、手取り318万5千円を受領しました。
成果
翌日に残高証明書を取得し、許可申請を実施。予定通り建設業許可を取得し、500万円以上の工事を受注できるようになりました。
事例3. 運送業 ─ 車両故障と大口案件への同時対応
状況
中部地方の運送会社(車両10台)。繁忙期に主力トラック2台が故障し修理費120万円が急遽必要に。加えて新規荷主から大口案件を打診されたが、車両リース費用の前払い100万円も必要でした。
対応
大手物流会社向けの売掛債権250万円を2社間ファクタリングで資金化。手数料率12%で手数料30万円、手取り220万円。
成果
修理を即日手配し、大口案件も受注。ファクタリング手数料30万円に対し、新規案件の粗利は約80万円となり、十分に回収できました。
事例4. 製造業 ─ 受注急増に伴う原材料仕入れ
状況
愛知県の自動車部品メーカー(従業員30名)。親会社から急な増産依頼があり、数日以内に原材料を500万円分発注する必要がありました。しかし直近の売掛金入金は2か月先。
対応
親会社向け売掛金800万円のうち500万円分を2社間ファクタリングで翌日資金化。手数料率8%(売掛先が上場企業のため低め)で手数料40万円、手取り460万円。
成果
増産依頼に対応でき、親会社との取引関係を維持・強化しました。
ポイント:売掛先が上場企業であれば審査が通りやすく、手数料率も下がる傾向があります。製造業の下請メーカーにとっては大きなメリットです。
事例5. 卸売業 ─ 仕入れ商機を逃さない資金確保
状況
名古屋の食品卸売業者。人気商品の限定入荷情報を得て300万円分の追加仕入れを希望したが、既存の売掛金400万円の入金は45日後。
対応
大手スーパー向け売掛金400万円を3社間ファクタリングで資金化。手数料率4%で手数料16万円、手取り384万円。取引先(大手スーパー)がファクタリング利用に理解を示していたため3社間を選択しました。
成果
商品は1週間で完売。粗利約60万円を確保し、手数料16万円を差し引いても44万円のプラスとなりました。
ポイント:取引先の理解が得られるなら3社間ファクタリングが圧倒的に有利。手数料率が2社間の半分以下になるケースも珍しくありません。
事例6. 人材派遣業 ─ 給与立替と許可更新
状況
東京の人材派遣会社。大手企業からの派遣要請が急増し、スタッフ50名の給与立替が毎月1,500万円に。さらに一般労働者派遣事業許可の更新に「自己名義の現金1,500万円以上」が必要でした。
対応
派遣先(上場企業3社)向けの売掛債権2,000万円を2社間ファクタリングで資金化。手数料率9%で手数料180万円、手取り1,820万円。
成果
給与を遅延なく支払い、許可更新も無事クリアしました。
事例7. IT業 ─ スタートアップの事業拡大資金
状況
Web開発スタートアップ(設立2年目)。大手企業からの受注が好調だが、外注エンジニアの報酬支払いが先行し資金繰りが逼迫。銀行融資は業歴の短さを理由に否決されました。
対応
大手企業向け売掛金800万円を2社間ファクタリングで資金化。手数料率10%で手数料80万円、手取り720万円。
成果
外注費を期日通り支払い、プロジェクトを完遂。次の案件も連続受注し黒字化に成功しました。
ポイント:銀行融資で「業歴が短い」と断られた場合でも、売掛先が大手企業なら審査に通る可能性があります。IT業はこのパターンが特に多い業種です。
事例8. 医療業 ─ 新規クリニックの設備投資
状況
開業1年目の内科クリニック。最新のCT装置導入に600万円が必要だが、診療報酬の入金は2か月後。銀行融資は決算書が1期分しかなく審査に時間がかかる状況でした。
対応
診療報酬債権700万円を診療報酬ファクタリングで資金化。売掛先が社会保険診療報酬支払基金のため手数料率が低く2.5%、手取り682万5千円。
成果
CT装置を導入し検査対応力が向上。患者数も増加し、3か月でファクタリング手数料分を回収しました。
ポイント:診療報酬債権は売掛先が公的機関であるため、全業種の中でも最も手数料が低く、審査通過率も高いのが特徴です。
事例9. 介護業 ─ 事業所増設に伴うスタッフ採用
状況
デイサービス運営会社(2拠点目を開設予定)。利用者の増加に伴い新拠点のスタッフ10名の採用・研修費用400万円が必要。介護報酬の入金は2か月後。
対応
国保連向け介護報酬債権450万円をファクタリングで資金化。手数料率3%(公的機関が売掛先)で手数料13万5千円、手取り436万5千円。
成果
スタッフを予定通り採用・研修完了し、新拠点を予定月にオープンしました。
事例10. 飲食業 ─ キャッシュレス決済のタイムラグ解消
状況
繁華街のレストラン(個人事業主)。クレジットカード決済比率が70%に上昇し、カード売上の入金(月末締め翌月末払い)を待つ間に仕入れ資金が不足していました。
対応
クレジットカード債権(大手カード会社向け)200万円を2社間ファクタリングで資金化。手数料率10%で手数料20万円、手取り180万円。
成果
食材の仕入れを安定化しメニュー数を維持。ファクタリングは繁忙期限定で利用し、手数料負担を最小化しました。
ポイント:飲食業ではクレジットカード債権のファクタリングが有効です。カード会社は信用度が高いため審査に通りやすく、繁忙期だけの利用でコストを抑えられます。
失敗から学ぶ ─ 避けるべき2つのパターン
JPS調査で「失敗した」と感じた経営者の約70%が「手数料が想定より高かった」と回答しています。成功事例だけでなく、失敗パターンも把握しておくことで同じ轍を踏まずに済みます。
失敗パターン1:手数料の安さだけで業者を選んだケース
何が起きたか
ある製造業者が「手数料2%」を謳うファクタリング会社に申し込みました。しかし審査後に「事務手数料3万円」「登録料5万円」「早期振込手数料5万円」など複数の名目で追加費用を請求され、実質的な負担は15%超に。契約書を十分に読まなかったことが原因でした。
どう防ぐか
見積もり段階で「手数料以外に一切費用が発生しないか」を文書で確認してください。契約書は必ず全文を読み、不明な項目があれば署名前に質問しましょう。手数料率が相場(2社間8〜18%、3社間2〜9%)と比べて極端に低い場合は、追加費用が隠れている可能性が高いです。
失敗パターン2:必要書類が揃わず即日資金化できなかったケース
何が起きたか
ある運送業者が「即日入金可能」のファクタリング会社に申し込みましたが、請求書・通帳コピー・身分証明書に加えて納品書・基本契約書の提出を求められ、書類準備に3日かかりました。結果として資金調達が間に合わず、別の案件を断ることになりました。
どう防ぐか
申込前に必要書類一覧を確認し、日頃から請求書・契約書・納品書を電子保管しておくことが重要です。また、「即日入金」を希望する場合は午前中に申し込むのが鉄則です。16時以降の承認は翌営業日入金になるケースが大半です。
2社間 vs 3社間 ─ 事例から見る使い分け
上記の事例を整理すると、以下のような使い分けが見えてきます。
| 比較項目 | 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング |
|---|---|---|
| 手数料相場 | 8〜18% | 2〜9% |
| 資金化スピード | 最短即日 | 1〜2週間 |
| 取引先への通知 | 不要 | 必要 |
| 向いている場面 | 緊急の資金需要、取引先に知られたくない | 取引先の理解あり、コスト重視、継続利用 |
| 該当事例 | 事例1,2,3,4,6,7,10 | 事例5,8,9 |
医療・介護の診療報酬ファクタリング(事例8・9)は、売掛先が公的機関のため実質的に3社間の構造です。手数料率は全業種中最も低い水準(2〜5%)であり、長期的に繰り返し利用するのにも適しています。
事例から導き出す「ファクタリング成功の3原則」
原則1:売掛先の信用力が高い債権を選ぶ
上場企業、官公庁、大手チェーン、公的機関(社保支払基金・国保連)が売掛先の場合、審査通過率が高く手数料率も下がります。複数の売掛債権がある場合は、最も信用力の高い売掛先の債権をファクタリングに回すのが鉄則です。
原則2:最低3社から見積もりを取る
同じ売掛債権でもファクタリング会社によって手数料率は大きく異なります。事例4では売掛先が上場企業のため8%でしたが、別の会社では12%を提示される可能性もあります。相見積もりがコスト削減の最大の武器です。
原則3:書類は事前に電子保管しておく
失敗パターン2で示した通り、書類不備は即日資金化の最大の障害です。請求書、基本契約書、納品書、通帳コピー、本人確認書類を日頃からクラウド上で管理しておけば、申込から入金までのスピードが格段に上がります。
業種別の利用率データ・個人事業主向け情報
本記事では業種別の具体的な成功・失敗事例を解説しました。ファクタリング利用者の全体像や業種別利用率データについては以下の記事をご覧ください。
▶ 【2026年最新】ファクタリングを利用する事業者一覧と利用理由|業種別データで徹底解説
▶ 【2026年最新】個人事業主・フリーランスのためのファクタリング完全ガイド|少額OK・審査のコツ
まとめ
ファクタリングの成功・失敗は「業種特性の理解」「適切な業者選び」「事前の書類準備」の3点に集約されます。
本記事で紹介した12事例のポイントを整理すると、建設業・運送業・製造業は「支払サイトの長さと先出し経費」が利用の主因であり、2社間ファクタリングで即日資金化するケースが中心です。一方、卸売業は取引先の理解が得られれば3社間でコストを抑えられ、医療・介護業は公的機関が売掛先のため最も有利な条件で利用できます。
失敗を防ぐ最大のポイントは「手数料の総額を事前に把握すること」。JPS調査で失敗を感じた経営者の70%が手数料の想定外を挙げています。相見積もりと契約書の熟読を徹底するだけで、この失敗はほぼ回避できます。
自社に近い状況の事例を参考に、まずは最低3社のファクタリング会社から見積もりを取ることから始めてみてください。


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